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日本発の商材・サービスを海外へ届けたい! ロフトワークの「ローカルビジネス・スタディ」

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Web、コンテンツ、コミュニケーション、空間、イベントなどの“デザイン”を手がけるクリエイティブ・エージェンシー〈ロフトワーク〉がお届けする「ロフトワーク ローカルビジネス・スタディ」。連載第3弾は、日本発の商材・サービスを海外へ届けたい中小企業とプロジェクトチームのビジネス機会創出・魅力発信を行う、経済産業省の〈JAPANブランドプロデュース支援事業〉(通称:〈MORE THAN プロジェクト〉)について。昨年に続き、今年もプロジェクトマネジャーを務める秋元友彦がご紹介します。

MORE THANプロジェクトとは?

“「日本のイメージって、どんなもの?」と、海外の友人に尋ねたら、こんな答えが返ってきたことがある。「えーっと、フジヤマ、サムライ、スシ、ゲイシャ……?」私は少しびっくりしてしまったが、その友人は冗談ではなく本気でそう思っていたようだ。地域の特色ある食品・工芸品・お祭り、おもてなし精神が宿った施設やサービス、世界を奮させるコンテンツ、先端技術だってあるのに。”

これは、〈MORE THAN プロジェクト〉のコンセプト文の一部です。「いやいや、もっと伝わっているはずなのに」と、私たちプロジェクトメンバーも半信半疑でしたが、海外に行ってみてこれは現実のことなんだと実感します。そんな、まだまだ伝わっていない日本の“今”の魅力をもっともっと海外の人に届けたい ——そんな思いから本プロジェクトは始まりました。

あるようでなかった新しい仕組みのプロジェクト

海外進出を目指す中小企業の多くは、海外の展示会(見本市)に出展します。しかしいざ出展しても、現地の知見や海外展開のノウハウがなく、言葉の壁もあって思うようにいかず、商品の魅力を伝えきれずに商談がうまくいかないことも多々あるそうです。また海外向けに新たに商品開発を行うことも重要で、これにも現地のビジネス慣習やデザインの知識が必要になります。

これまでの国主導の〈日本企業の海外進出支援〉は、展示会への出展費や商材改良のための開発費を補助金として拠出するというパターンが主なものでした。

MORE THAN プロジェクトとは、海外に挑むローカル企業が自信をもって製品の魅力を伝えて海外進出を成功させるために、地域企業とタッグを組む経験豊富なプロデューサーやデザイナーの活動資金を一部支援し、海外での商談成立(商品取り扱いの実現など)を目指すプロジェクトです。

ロフトワークは、2014年度から事務局として本プロジェクトに携わり、クリエイティブやコミュニケーションをサポートしています。

“地域から都心へ”ではなく、“地域から世界へ”

プロジェクトチームのひとつ〈播州刃物〉は、播州地域に住むデザイナーが立ち上げ、プロデュースしている刃物ブランドです。兵庫・播州地域の刃物産業は後継者不足が課題となっていました。高齢化で工場を畳む職人が増え、そのためにほかの工場にしわ寄せがきて、後継者育成まで手が回らない……という悪循環。そこで、OEM(委託者のブランドで製品を生産すること)ではない、組合独自の製品をつくり、価格もこれまでの相場と比べて約2倍に設定しました。個々に活動していた職人たちを〈播州刃物〉というひとつのブランドで組合化し、一社に負荷がかかりすぎないようにしながら商品価値を高めるビジネスモデルがつくられました。プロデューサーは、そのブランディングからデザイン・広報までを一手に引き受け、播州刃物は海外のセレクトショップや美容室で取り扱われるなど、海外で数々の商談を成立させています。

もうひとつの播州刃物の課題は、刃物を長く使うためのカルチャーを理解してもらった上で活用してもらうこと。刃物は研がないと劣化するのに、海外では研磨できる職人がいません。ブランド誕生から3年目のいま、現地に研ぎ師のネットワークとビジネスモデルを形成し、販売網を徐々に広げています。2015年のグッドデザイン賞ではその取り組みが評価され、ビジネスモデルの部門でBest100に選出されました。播州刃物はMORE THAN プロジェクトが始まる前から活動しているブランドですが、その活動プロセスの一部にMORE THAN プロジェクトの補助金やネットワーク間のコミュニケーションも活用した事例のひとつでしょう。

地域から都心ではなく、直接世界へ。「地方だから仕方ない」と思う必要はありません。いいものがあれば自分たちの力で盛り上げる、それが難しければまずは誰かと共に取り組むことも成功への架け橋となるはずです。

予想を大幅に越える成果と、その秘訣

2014年度のプロジェクトチームは全16チームのうち15チームの商談が成立し、合計の商談成立数も150以上という成果でした。これまでの同様の事業と比較すると非常に良い結果となりました。

補助事業でありがちなのは「最初に補助金を事業者へ渡し、事業年度の最後に報告書を提出してもらう」というもの。MORE THAN プロジェクトでは、ひとつひとつのプロジェクトチームとこまめに連絡を取り合いながら、以下のような取り組みでプロジェクトの過程をしっかりとサポートしています。

(1)公式WebやFacebookでの日本語・英語の情報発信(2)年4回の連携促進会議を開催。海外進出に知見のあるアドバイザーを招き、意見交換を行ったり、各チームが全国から集い報告し合う場をつくる(3)プロジェクトチームのネットワークを広げ事業をよりスケールさせることを狙うイベントを年2回開催(4)公式Webで事業者による〈マンスリーレポート〉の掲載(5)質の高いPRツールを制作

これといって特別なことはしていませんが、事業者が成果をだすためにひとつひとつのプロセスを大事に進めてきました。もうひとつ大切にしていることは、MORE THAN プロジェクトは“コミュニティ”であるということ。経済産業省、ロフトワーク、プロジェクトチーム、アドバイザー、イベント参加者……関わるひとすべてがMORE THAN プロジェクトのコミュニティメンバーです。

行政とのプロジェクトだからできること

スタート当初、経済産業省の担当の方から「経産省らしくない事業にしてほしい」と伝えられました。しかし、私たちから提案したのは「経産省だからこそできることをしましょう」ということ。行政だからできることと、民間だからできること。クリエイティブエージェンシーが一緒にやるからできることで価値をつくり、胸をはって自慢できる、本当の意味での“ブランド”を構築したい。民間が取り組むことの意味はここにある気がしています。

そんな思いで2014年は各事業商材のデザイン面や“見せ方”に特化し、プロジェクトの設計に一定の評価をいただきました。今年度はコミュニケーション面を強化し、より事業の海外展開の精度を上げたいと思っています。ほかにも、2年間で培ってきた経験をもとに、具体的な海外進出ノウハウをまとめたいと考えています。プロジェクトで得た知識を体系化させ、オープンデータとして地域の人に公開し、情報を簡単に得ることができる仕組みをつくることが目的です。

十数年後、地域から海外への挑戦が当たり前になり、振り返ったときに「あそこから全部はじまったよね」というようなシーンが生まれればいいな……と、思っています。

writer profile

Tomohiko Akimoto

秋元友彦

あきもと・ともひこ●主にクライアントプロジェクトにおけるプランニングからプロジェクトマネジメントまで幅広く担当する、ロフトワークのハイブリッド型ディレクター。地域産業とクリエイティブを融合させ、国内外問わずマーケットの獲得を目指すプロジェクトや官公省庁のプロジェクトを中心に、コミュニティ設計、スペース活用、コンサルティング、イベントの企画・運営などを行う。

company profile

Loftwork

ロフトワーク

ロフトワークは、Web、コンテンツ、コミュニケーション、空間、イベントなどの「デザイン」を手がけるクリエイティブ・エージェンシーです。企業や官公庁、大学などのクライアントの課題をクリエイティブで解決するプロジェクトを年間約500件以上手がけています。
http://www.loftwork.jp/

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