伝統的な張子から現代的でユニークなものまで
那覇市の第一牧志公設市場から、徒歩数分。平和通りのアーケード街からひょいと路地裏に入ると、まぶしい黄色の店がひょっこり現れます。
ここは琉球張子作家の豊永盛人(とよながもりと)さんのお店、〈玩具ロードワークス〉です。
琉球張子とは、沖縄で昔からつくられていた玩具のこと。親が子どもの健やかな成長と出世を願い、買ってあげた縁起物といわれています。主に旧暦5月4日のユッカヌヒーの日に開催されていた玩具市で売られていました。 南国特有のカラフルな色づかいが特徴です。
しかし明治以降、大量生産のセルロイドやブリキのおもちゃに押されて衰退し、いまでは琉球張子をつくる職人はほんのわずかになってしまいました。そのひとりが豊永さんです。
大学時代にアメリカに渡り、美術館で出会ったアフリカの彫刻に感銘を受けた豊永さん。物も道具も満足にないなかから生まれてきた作品に、深く心を揺さぶられたのだそう。
そして「いつかは自分も何かで……」という想いで帰国したところ、友人から琉球張子のつくり手にならないかと誘われ、沖縄の地に根差したものづくりを始めました。
とはいえそれからは、試行錯誤の日々。後継者不足で技術が受け継がれていなかったため、つくり方を教えてくれる人がいなかったそう。
さらに現物のほとんどは戦争で失われてしまっていたため、古い張子の資料を見るために本土へ渡り、人を訪ね、民芸館や郷土玩具館を訪ね。沖縄でもユッカヌヒーに実際に出たことがあるおじぃに会いに行き、独学でここまでたどりついたと言います。
そんな豊永さんの張子は、伝統の古典張子からくすっと笑える現代モチーフの張子まで、バラエティ豊か。
店内に一歩入った途端、あれもこれもと目移りしてしまいそうなほど愛嬌たっぷりの張子が並べられています。ひとつひとつ手づくりなので、少しずつ表情が違うのもまた味わいです。
鬼が島には、桃太郎を待ちうける鬼がずらり。到底怖そうにない、心和む顔立ちがチャーミング。昔話モチーフなら、鶴の恩返しの鶴や一寸法師もあります。
ユニークなケンタウルス。
さらに「ロシアシリーズ」というロシアをモチーフにしたシリーズも。イエスさまを抱いているマリアだるまはクリスマスシーズンにも飾れる張子です。
こちらは豊永さんのイチオシで、その名も「ボヤール」。ちょっとした秘密が隠れているので、お店でそっと確かめてみてくださいね。
張子のほかに、豊永さんのイラストが描かれたアイテムもたくさん。Tシャツや手ぬぐい、ポストカードは種類豊富です。
〈なぞなぞクッキー〉は、本島北部にある〈八重岳ベーカリー〉さんとのコラボから生まれたもの。どんななぞなぞが隠れているかは、開けてからのお楽しみです。
〈あいうえおカルタ〉〈世界メルヘンかるた〉〈沖縄おもしろカルタ〉は、沖縄県立博物館のショップにも置かれている人気商品。イラストはもちろん、読み札がまたユニーク!子どもより大人に受けそうな、お土産にもぴったりのカルタです。このカルタはLINEスタンプにもなっています。
伝統のおもちゃをつくっているという気負いはなく、自分がおもしろいもの、好きなものをつくっているという豊永さん。
張子にフェルトや布を組み合わせたり、ちょっとした仕掛けを施すなど一技ありのしなやかな発想には驚かされます。
古典張子も、現代モチーフの張子も。ユーモラスで遊び心にあふれ、手に取ると童心にかえったようにわくわくする豊永さんの張子。今後、その手からどんな作品が生まれるのか、ますます楽しみです。
information
玩具ロードワークス
住所:沖縄県那覇市牧志3‐6‐2 1F
TEL:098-988-1439
営業時間:10:00~18:00
定休日:日曜日
editors
沖縄CLIP
沖縄クリップは、沖縄の隠れた魅力や新しい情報を、沖縄在住のフォトライターが中心となって美しい写真とともに世界に発信し、沖縄の観光産業に貢献するという目的のプロジェクトです。沖縄が大好きな皆さまとさまざまなかたちでコラボレーションし、ともにつくりあげる新しいかたちの観光情報メディアを目指しています。
編集長 セソコマサユキ
http://okinawaclip.com/
writer profile
Akiko Ono
小野暁子
2011年に沖縄へ移住。観光サイト『沖縄CLIP』のフォトライターの活動を中心に、沖縄関連の雑誌やサイトにて執筆。おいしいごはんやかわいい手土産探し、宿めぐりが大好きで、取材では沖縄の人たちの温かい人柄を伝えることをモットーにしている。ふたりの息子とともに沖縄の大自然も満喫中。
http://okinawaclip.com/ja/detail/714