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子どもと一緒に自然を楽しむ、森のようちえんの「山感日」

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それぞれのペースで進む

9月に入ってから、すっかり秋本番? と思うほど涼しくなった。台風の影響もあり、梅雨のような雨続きの日々。朝晩は寒いほどで、毛布と掛け布団を引っ張り出した。

先日、森のようちえんの、秋の「参観日」ならぬ「山感日」があった。父母・祖父母が、子どもたちと一緒に自然を楽しむ1日だ。わたしもお休みをもらって、久しぶりに子どもたちと森へ。この日のフィールドは、森のようちえんの代表・西村早栄子さんの持ち山、通称「西村山」。

朝、10時に西村山の近くの駐車場に集合すると、スタッフから1日の流れの説明。「11時くらいに西村山の広場で朝の会をするので、それぞれ自由に向かってください。そのあとお昼ごはんを食べて、昼過ぎから相撲大会を始めましょう」という感じで、皆それぞれのペースで森への道を歩き始める。

森へ歩き始めた子どもたち。田んぼの脇には、小さな花がたくさん。

駐車場から西村山の広場までは、普通に歩いたら10〜15分。1時間あれば十分すぎるように思えるけれども、そんなことは決してない。娘は、途中で合流した年中のKちゃんと、田んぼの脇で花を摘み始めた。遠くから見ると全然わからないけれど、近づいてよく見ると、いろんな種類の小さな野花があちこちにひっそりと咲いている。ふたりとも、新しい花を見つけてはうれしそうに摘み、手の中に色とりどりのブーケをつくっていく。

年中のKちゃんがつくったブーケ。

そんなことをしながら、服にひっつく葉っぱを採って人にくっつけて遊んだり、山際になっている実を採って食べたり、森に入るとキノコを観察したり。とにかく、ひとつひとつにじっくり時間を費やすので、なかなか前に進まない。まわりにちらほら見えていたお友だち達の姿はもう見えずすでに西村山に行ってしまったようだった。ようやく半分くらい歩いたかな……というところで時計を見ると朝の会が始まる11時まであと5分。全然間に合わないよ!(笑)

お姉ちゃんたちに、葉っぱをくっつけられた息子。

Kちゃんが「食べられるよ」と教えてくれた実。

草むらでひたすら花や実を摘む。

そのうち、スタッフが様子を見に戻ってきた。「全然進まないんですよ〜」と私が言うと、わかるわかる、という表情で、「大丈夫ですよ〜」と言ってくれる。朝の会に間に合うことよりも、子どもが夢中になっているその時間を大事にしてくれる、それが森のようちえん・まるたんぼうである。「早く」とは決して言わない。

尾道にいた頃、娘が保育園に通っていた時期は、よく先生に「Hちゃん(うちの娘)は本当にマイペースで……」と言われたものだったが集団行動がそんなに得意ではなく、果てしなくマイペースな彼女もここでは、そのまんま受け入れられている。まわりを見て、合わせることももちろん大事だけれど伸び伸びと、自分のペースで夢中になれる時間を持つことは何よりも大事じゃないかな。15分で歩けるところを、1時間半も楽しめるなんてむしろすごいことではないだろうかと思ったりもする(笑)。

そんなこんなで、やっとたどり着いた西村山の広場でKちゃんと娘は「おなかすいた〜!」とお弁当を食べ、無事に午後の相撲大会には間に合ったのであった。

久しぶりの晴れ間、森の木漏れ日が気持ちいい。

全力でぶつかる時間

この日の相撲大会は、前回の山感日のように「やりたい人だけやる」のではなく「全員参加の」相撲大会で、スタッフがいろんな思いをもって企画してくれたものだった。子どもたちの気合いも相当なもので、家族や友だちと練習を重ねてきた子もたくさんいた。お昼ごはんを食べ終わると、皆そわそわし始めて、土俵のまわりに集まってきた。周囲は色とりどりの旗で飾りつけられ、土俵の横には顔写真入りの対戦表。ただの観客であるわたしもなんだかドキドキしてくる。

「始めましょう〜!」と声がかかり、勝った人だけがもらえる、野の花のブーケ(女の子用)と木の枝を削った剣(男の子用)が登場。対戦は年少さんからスタート。

大歓声のなかでの闘い。

年少さんの取り組みは微笑ましいものだったが、それでも負けると悔し泣きしている子もいた。娘も負けて、ブーケがもらえなかった悔しさで試合が終わるなりその場を走り去ってしまった……。年中さんになると、一気に力強さと迫力が増す。年長さんの対戦は、残念ながら見ることができなかったけれど(走り去った娘をつかまえなければならず……)きっとすごい気迫に満ちた闘いだったことだろう。戻ってくると、負けて号泣している子、バスの中にひっそり隠れて泣いている子……。いろんな気持ちがそこらじゅうに渦巻いていて、見ていなかったわたしにも、ものすごい闘いが繰り広げられたであろうことは想像ができた。

それぞれのペースで自由行動がメインの園生活だけれど、こんな風に緊張感のあるなかで、ピリっと本気で全力を出し切る時間もいいものだ。勝ってうれしい気持ちも、負けて悔しい気持ちも、きっと大事な糧になる。

帰りの会は、午後の木漏れ日の下で歌をうたったり、絵本を読んでもらったり。最後に、森に大きな声であいさつをして、解散となった。

帰りの会、絵本の時間。皆、夢中で聞いている。

いつもながら心地よい、だけれどそれだけではない、いろんなことを感じ、考えさせられた1日だった。

writer profile

Aya Tanaka

田中亜矢

たなか・あや●横浜市生まれ。2013年東京から広島・尾道へ、2015年鳥取・智頭町へ家族で移住。ふたりの子ども(3歳違いの姉弟)を育てながら、マイペースに音楽活動も続けている。シンガーソングライターとしてこれまで2枚のソロアルバムをリリース、またバンド〈図書館〉でも、2015年7月に2枚目のアルバムをリリース。
http://ayatanaka.exblog.jp/

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