満腹でもはふはふと食べられてしまうおいしさ
空港から高知の市街地へ向かうタクシーの中で、そのシュウマイのおいしさについて聞いていました。
1軒目の料理屋で十分にお酒も高知の魚などもいただいた後、みんなで、そのシュウマイのおいしい中華のお店〈宝永〉に行きましょうとなりました。タクシーの中で聞いた通りの展開です。もう、お腹いっぱいなんだけど、連れて行かれたそのお店がおいしくて食べられてしまうとのこと。
期待しながら、高知の夜のまち、狭い裏路地の店から大通りを渡って歩きます。繁華街は、サラリーマンが呑み屋から移動する時間なのでしょうか、にぎやかです。
少し静かになった通りの雑居ビルに「ラーメン餃子」の看板。奥に入るとカウンターだけのお店で、8席ほど。私たちが着席して満席。呑み直しとばかりに、瓶ビールを注ぎあって乾杯。案内してくれた呑ませ上手の食べさせ上手な高知人が、慣れた口調で餃子を注文。気心知れた常連客に連れてきてもらえるのはうれしいこと。
このお店を切り盛りするのは、マスターおひとり。やさしい笑顔で白い上っ張りが決まってます。さて、この餃子、注文を受けると餃子餡が入ったボウルと餃子の皮をカウンターの台の上に乗せたかと思うと、素早い手つきで、マスターが餃子を包みあげていきます。
作り置きでなくて包みたて餃子は、すぐさま中華鍋に並んで焼かれてできあがり。素朴な見た目ですが、ひと口食べて、バリッとした皮から飛び出した野菜多めの餡のおいしいこと。
「じゃあシュウマイも入るんじゃない?」と。これまた受注生産制。手際のよいマスターが「餃子と中身はもちろん違うよ」などとお話している間にシュウマイもできあがり。やわらかいフリルをまとった白く艶やかなひと皿の登場。
焦る気持ち、はふはふと頬張ります。つるりと口に入ったフリルの皮からやわらかい餡がほどけてジューシーだこと。グリーンピースもなく直立もしていない見た目同様に、お味もシュウマイってこんなにやさしかったのかと、観念が覆された感じ。
タガが外れたとは、胃袋のタガ!? ここは、アレもおいしい、コレもおいしいと注文が通って、満腹なのに不思議と箸も進んでしまいます。高知の日本酒〈美丈夫〉の小瓶もあって、やさしい宝永の中華料理と合うので呑み進んで。気がつけば、本当のシメのラーメン。極めつけはデザートの大学いもまで、フルコース中華。満腹ごちそうさまでした。
information
宝永
住所:高知県高知市廿代町8-8
TEL:088-824-7784
営業時間:18:00頃~22:30頃
text & illustration
kao.ri hirao
平尾 香
ひらお・かおり●イラストレーター。神戸生まれ、独自の個性を発揮した作風で、世界的ベストセラー「アルケミスト」を始めとする書籍のカバーや、雑誌の挿絵、広告などで活躍。個展も多数開催。現在は、逗子の小山にアトリエを構え、本人の取材やエッセイなど活躍の幅は広い。著書本に「たちのみ散歩」(情報センター出版局)「ソバのみ散歩」(エイ出版社)
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